第20回ドルスキニンカイ詩の秋
および第5回世界俳句協会大会2009報告
9月30日から10月5日まで、リトアニアのヴィルニュスとドルスキニンカイで開催された当イヴェントには、23カ国から121人の参加者を迎えた。
フェスティバルのテーマは「短詩型」「俳句」であった。全参加者は、自作5句を2回朗読する機会を持った。ヴィルニュスでの3朗読会のうちの1回とドルスキニンカイでの6朗読会のうちの1回である。年鑑アンソロジー『ドルスキニンカイ詩の秋2009』には各人の10句が原作・英語・リトアニア語で掲載され、朗読は、大会前にヴィルニュスで配布されたこのアンソロジーにほぼ拠った。
世界俳句協会大会は、ヴィルニュスの作家クラブにおいて開催された。ドルスキニンカイでは「西洋と東洋における短詩について」の討論を行った。司会はラウリーナス・カトクス、討論者は松岡秀明、夏石番矢、大久保喬(以上日本)、ジョゼフ・スペンス・シニア(アメリカ)、ダリア・サトカウスキーテ、レギマンタス・タモシャイティス(以上リトアニア)、ピエトロ・タルタメーラ(イタリア)、ディートマー・ターフナー(オーストリア)の各氏であった。
またドルスキニンカイでは、無記名俳句競作が行われた。審判員はアンドレス・エヒン(エストニア)、鎌倉佐弓(日本)、サントシュ・クマール(インド)、松岡秀明(日本)、ドラガン・J・リスティッチ(セルビア)、アルトゥーラス・シランスカス(リトアニア)、土谷直人(日本)の各氏。多国籍審判のため、無記名句はすべて英訳で提出された。受賞者は第1席がタウトヴィーダ・マルツィンケヴィチューテ(リトアニア)、第2席がケリー・ショーン・キーズ(リトアニア/アメリカ)、第3席がイリーナ・ヴァタジーナ‐モルスカヤ(ラトヴィア)、同リディヤ・シムクテ(リトアニア/オーストラリア)、第5席がセルゲイ・クルバトフ(ウクライナ)の各氏。また、恒例となっているリトアニア語による無記名競作も同時に行われた。
また世界俳句協会大会の慣例に従い、大会期間中に作った一句を原語と英訳で全員が披講するよう提案した。
文化教育プログラム「ブックランド」は、ドルスキニンカイ詩の秋の会期に合わせ、10月3日(日)14時から、ドルスキニンカイ博物館で催された。創作工房「君にも本がつくれる」はリトアニアの若手グラフィック・アーティストのスィグテ・フレビンスカイテが企画した、書物、クリエイティブな思考、そして実践の総合学習である。ワークショップは、製紙法や製本法など書物文化にかかわる諸技術を教え、目に見える形で、古代から現在まで、書物がどのように発達してきたのかを示す目的で行われた。工房内では本の綴じ方いろいろ、墨流しの紙作り、スプーンで擦りだす蔵書票、ユニークな動画本、点字タイプの打ち方、日本の墨絵とヨーロッパ書道の神秘を解く、針穴写真機作り、影絵演習、封緘講座などのコーナーを設け、誰でも一冊の本を作れるようにした。ワークショップでは日本のアーティストで俳人の丹下尤子と竹浪明、またイタリアのピエトロ・タルタメーラが一翼を担ってくれ、とてもうまくいった。
フェスティバルは成功を収め、多くの観客を集めた。俳句創作セミナーなどのいくつかの催しには、駐ヴィルニュスの明石美代子大使のご出席を戴いた。
フェスティバルの主たる成果は、全参加者による原語・英語・リトアニア語訳の年鑑アンソロジー『ドルスキニンカイ詩の秋』および『リトアニア俳句アンソロジー・風のふるさと』の刊行である。また、夏石番矢はこの機に合わせて、東京で日本語・英語・リトアニア語の俳句集『迷路のヴィルニュス』を出版した。
開催に先だち、フェスティバルの推進、また一般に俳句創作を広めるため、参加者の俳句を数多く翻訳して週刊『文学と芸術』誌上に掲載した。当イヴェントについての記事と競作入賞者の作品は、大会終了後、同誌および他媒体で報じられた。それまで俳句を書いてこなかった多くのリトアニアの詩人が、フェスティバルを通じてこの型式を体験し、多くの面白い俳句を作った。このことについての拙作を紹介する。
リトアニアの魚
指で音節数える
秋の湖われわれと世界俳句協会との共催は成果をあげた。これからも、おもしろい共催プロジェクトが期待できるだろう。両組織とも長い活動歴があり、文学イヴェントの分野ですばらしい経験を積み上げてきているのだ。
コルネリユス・プラテリス(リトアニア)
platelis@takas.lt;
Cell phone: +370 650 25237和訳 雲井ひかり