A Report on The 2nd WHA Japan’s General Meeting
第二回世界俳句協会日本総会に参加して
 
Hirokazu Aihara (Thailand & Japan)
藍原 弘和 (タイ・日本)
 
 
二〇〇七年四月二十九日(日)、東京上野の水月ホテル鴎外荘富士の間にて、第二回世界俳句協会日本総会ならびに懇親会が開かれた。総会では『世界俳句二〇〇七』についての反響、二〇〇五年度と二〇〇六年度の会計、二〇〇七年度の事業計画などについて報告された。総会に引き続いての懇親会では、初夏のかおりいっぱいの会席弁当を食べながら、俳句朗読、馬頭琴の演奏を楽しんだ。
参加者は、秋尾敏、藍原弘和、石倉秀樹、一井真理子、梅澤鳳舞、大井恒行、大牧広、表ひろ、柿本多映、加藤太郎、鎌倉佐弓、木村聡雄、小林俊子、敷地あきら、高宮千恵、高宮隆三、竹内絵視、田中陽、樽谷俊彦、丹下尤子、坪井祭星、時広智里、夏石番矢、中村武男、野谷真治、スーザン・ノールトン、長谷川裕、松岡秀明、三上啓、山ア十生、來空の三十一名。残念ながら天理から参加を予定していた清水国治が急病のため欠席となった。(敬称略、以下同)
今回、日本に戻るのは一年二か月ぶり。タイ・バンコクに生活拠点を移して数年。電子メールやウェブサイトを通じて連絡している方もいるが、実際に会うのは数年ぶりあるいは初対面が殆ど。緊張と興奮のまま成田に着いた。
 
 
午後5時、夏石代表の挨拶をもって総会は始まった。参加者の自己紹介に続いて『世界俳句二〇〇七』についての反響について報告。
復本一郎(『吟遊三十四号』掲載済)と皆川燈(『図書新聞』三月三日号掲載)の書評を紹介。
皆川の書評は翻訳の視点から『世界俳句二〇〇七』を述べている。「言語の如何を問わず、魅力的な作品は翻訳への意欲を呼び覚まし、翻訳されることによって作品はさらに豊かな地平を獲得していく。こうした相互の往還こそが「世界俳句」の真骨頂ではないかと私は思う。その意味で本書には翻訳者の名前も明記してほしい。」と要望しつつも、「本書が今後も実作者と翻訳者の交錯する、緊張に満ちた実験的な場所として存在し続けることを切に願ってやまない。」と『世界俳句二〇〇七』に対してエールを送っている。復本、皆川両氏共に、『世界俳句二〇〇七』を好意的にとらえられているようである。
蛇足ながら「魅力的な作品は翻訳への意欲を呼び覚まし作品はさらに豊かな地平を獲得していく」ことは夏石のブログで実行され成功している。夏石の作品「ヒロシマという語蝶より重からんや」は、英語、仏語、独語、イタリア語、スペイン語、リトアニア語、ルーマニア語、マケドニア語、アラビア語、ヘブライ語、中国語、モンゴル語、タイ語、ブルガリア語、ロシア語、エストニア語、ラトヴィア語、ポーランド語、クロアチア語、スロヴェニア語、地球語という二十二言語に翻訳されている。国際的コミュニケーション・ツールとしてのインターネットと世界俳句の幸運にして必然的な出会いがある。未見の人が必ず閲覧してほしい。もちろん、この成功例が今後の世界俳句協会の活動に反映されなければならない。
書評紹介に続いて鎌倉会計から二〇〇五年度と二〇〇六年度の会計報告が行われた。詳細は省略するが、『世界俳句二〇〇七』刊行にあたり『世界俳句二〇〇六』と比べ一〇%以上の経費削減を行ったことは注目に値する。もちろん、経費削減と同時に質まで下がってしまっては問題外であるが、純粋な経費削減に成功したことは二誌を比べてみれば明確だろう。文化団体では、俳句作品や刊行物、開催事業などに目が奪われがちだが、経費削減などの裏方的な努力にも注目しなければならないと思う。安定した経済基盤があってはじめて自由でより高度な作品発表ができるのだから。
あくまでも私個人の意見であるが、紀伊國屋書店のような海外展開している書店の海外支店で『世界俳句』が販売されることを希望する。ちなみに私の住むバンコクの日系書店では在住や旅行中の邦人以外にも、日本文化に関心をもつ現地人の来店が多い。和食やアニメ、ファッションなどが中心であるが日本文化への関心は高い。『世界俳句』を通して俳句という日本文化を各国に周知しなければならないと思う。
組織運営関して、世界俳句協会は二〇〇六年一〇月四日をもって無限責任中間法人となった。法人化によって対社会的信用度が増し各種助成金の申請が容易になり協会の運営が安定することを期待する。
引き続き夏石より二〇〇年度の事業計画について報告が行われた。主な事業は「第四回世界俳句協会大会」の開催と『世界俳句二〇〇八』の刊行。
第四回世界俳句協会大会は「違いを超える俳句」をテーマとして九月十四日―十六日の三日間、水月ホテル鴎外荘と明治大学を会場にして開催を予定している。大会に対する注目度は高く既に四月十日付『毎日新聞』夕刊にて紹介されている。
日本からは夏石代表のほか、金子兜太、阿部完市などの著名俳人が参加を予定。海外からはエストニアのネオ・シュールレアリスト詩人アンドレス・エヒン、インド詩歌祭ディレクターのモハメッド・ファクルディン、ルーマニア俳句協会会長のヴァシーレ・モルドヴァン、ポルトガル生まれで世界俳句協会顧問のカジミーロ・ド・ブリトーなどが参加を予定。
期間中、主要参加者による講演、俳句朗読、パフォーマンス詩朗読、国際俳句出版(多言語俳句)プレゼンテーション、WHA大会記念俳画コンテスト二〇〇七の入選作展示、WHAジュニア俳句コンテスト二〇〇七の結果発表などが行われる。なお、各講演には必ず和訳が付く。興味のある講演等を選んでの参加も可能だ。夏石は部分参加や英語の苦手な人の参加を呼びかけた。
協会定款の使命4『英語を現在の国際言語として使うことを認めながら、俳句と世界で共有するよううながすためにすべての言語での俳句創作と俳句解釈の実践を促進すること。』に対して、「日本語を俳句の母体言語と規定し、その上で日本語の使命と尊重のニュアンスを入れて改定する必要がある」という旨を夏石代表は述べたが、これは日本人俳人にとって無防備に喜ぶべきことなのだろうか。むしろ、日本人俳人の技量や意識を試されるのではなかろうか。第四回大会を通して日本人俳人は何を得るのだろうか。
六時三〇分、総会は無事終了。引き続き懇親会へ。
 
 
会席弁当には山椒の若芽をのせた筍飯、初夏の野菜の炊き合わせ、胡麻豆腐などが並ぶ。優しい味だ。日本に戻ってきたことを実感する。お腹が落ち着いたころ俳句朗読が始まった。日本語だけでなく英語、中国語、フランス語、イタリア語をもまじえての朗読はこの会ならではだ。続いて、モンゴルを代表する馬頭琴奏者アヨーシ・バトルエルデネが登場。参加者は馬頭琴独奏を十分に堪能した。
八時三十分、和気藹々とした雰囲気のなか会は無事終了した。